【記念講演会】
演題:「最近の金融経済情勢について」
[講演概要]
1.米国相互関税公表(4/2)前夜
1.1 3月短観等
2025年4月支店長会議における報告
生産について
・IT関連財でAI関連の生産が増加基調で、自動車関連では受注残への対応から生産が増加した。
・各国の通商政策を巡り、生産や企業収益等への影響への懸念がある。政策の不確実性が高まり、影響 を見極めつつ具体的対応を進めていく必要があるとの声がある。
設備投資について
・建設コスト高による先送り・縮小、発注先の人手不足による工事・納入の遅れ等が一部にみられるものの、幅広い分野で積極的な投資姿勢が維持されている。
個人消費について
・旺盛なインバウンド需要もあって、観光・宿泊や外食などが引き続き堅調、都市部の百貨店等における高額品の好調な販売が続く。
・スーパー等を中心に、物価高を受け消費者の節約志向の影響がある。
雇用・賃金について
・春闘での大企業を中心とした前年を上回る妥結結果等を受け、地域の企業においても、幅広い 業種・規模で、人材確保・係留の観点から、高水準の賃上げを行うことが期待される。
・中小企業を中心に、収益面の厳しさから慎重な姿勢を示す声もある。
企業の価格設定について
・米などの仕入コスト上昇等に伴う値上げの動きがある。
・人件費の価格転嫁について、賃上げ原資確保のための転嫁を実施・検討する動きがある。
1.2 日銀・植田総裁記者会見<抜粋>(3月19日)
・先行きの経済・物価・金融情勢次第ですが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、以上のような経済・物価見通しが実現していくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになると考えている。
・春季労使交渉では、大企業だけでなく、相対的に規模が小さい企業でも、高めの賃上げ率が実現しており、賃上げの動きが広がってきていることも窺われる。今回公表された結果は、1月会合時点での見通しに概ね沿ったものと評価している。
・アメリカの通商政策がどういう姿になるかということを見極め、それから、それがまず、アメリカ経済、世界経済に及ぼす影響、そしてそれを通じて、あるいはより直接に貿易のルートを通じて日本経済に及ぼす影響もあるが、これらを見極めたうえで、わが国のインフレ・経済見通しにどういう影響を及ぼすかということを精査して、政策を決めていく。
2.米国関税政策とその影響 ※ 4/11日時点
2.1トランプ2.0の関税政策の概要
国別関税
・中国は、3/4より+20%に拡大(相互関税と合わせて追加関税は145%)。
・カナダ・メキシコは、3/4より+25%。(一部適用除外有り)
財別関税
・鉄鋼は、3/12より+25%。
・アルミは、3/12より+10%⇒+25%に上昇。(鉄・アルミを使った部品等も対象)
・自動車・部品は、原則4/3より+25%。
相互関税
・4/5より世界全ての国に+10%。
・4/9より国別追加関税(90日間停止中)。ベトナム、タイ等も高関税(46%、36%等)となっており日本にとっても懸念材料である。
2.2世界経済への影響
OECDは、一定の追加関税を前提に、G20の経済成長率を、2024年12月時点より2025年3月を
-0.2%、2026年を-0.3%と下方修正している。
2.3我が国経済への影響(概念整理)
・GDPは、①グローバル需要の減少、②輸出の減少、③企業収益の減少、⑤サプライチェーンの再構築等により低下傾向となり、④為替変動によっては円安になれば上昇、円高になれば低下傾向となる。
・物価は、①グローバル需要の減少、②輸出の減少、③企業収益の減少により低下傾向となり、④為替変動によっては円安になれば上昇、円高になれば低下傾向となり、⑤サプライチェーンの再構築等により上昇(押上げ)傾向となる。
3.市場動向
・金融市場の動向①金利:国債金利(10年物)は25年入り後1.6%程度まで上昇していたが、3月に急低下し、現在再び上がってきている。国債金利(5年物)は25年入り後1.2%程度まで上昇していたが、3月に10年物と同様に急低下し、現在再び上がってきている。
・金融市場の動向②株式:日経平均株価は25年初に40,000円超まで上昇していたが、3月に急低下し、現在反発してきている。
・金融市場の動向③ドル円相場:24年に一時160円/ドルを超えたが、直近は145円/ドル程度になっている。
・貸出金利の動向(1):貸出基準金利の短期プライムレートは1.8%程度である。
・貸出金利の動向(2):貸出約定平均金利(新規)は、近年低下傾向にあったが、底を打ち上昇傾向にある。
・不動産価格動向:商業用、住宅用共に2012年頃より上昇傾向が続いている。
・オフィス空室率:2020年頃より上昇傾向にあったが、最近は下降傾向となり、三大都市で5%程度となっている。
・海外投資家の売買金額(J-REIT):2004年頃より上昇傾向にあり、2024年は約1兆円で、そのシェアは50~60%である。
以上
【定例総会】
本年度定例総会が17時よりハイアットリージェンシー横浜 20階Grand Ball Roomにて開催され、本年度会長には斉藤昌喜氏(株式会社北原不動産 常務取締役)、副会長には山田智也氏(有限会社エスク 代表取締役社長)と加藤健平氏(株式会社ワタヤコミュニティー 専務取締役)が選任されました。また今年度の事業を推進する各役員も決定しました。
前年度事業報告・収支決算・監査報告、令和7年度事業計画・予算案の各説明があり、承認されました。
【懇親会】
定例総会、日本銀行横浜支店長大竹弘樹様の記念講演会終了後、懇親会が開催されました。会場のハイアットリージェンシー横浜 20階 Grand Ball Roomは横浜港やベイブリッジが一望できる見晴らしのよい明るい会場です。
神奈川県不動産のれん会の斉藤昌喜新会長よりご挨拶があり、新役員が紹介されました。懇親会がスタートし多くの参加者からご挨拶をいただき、山田智也副会長の音頭による締めで4月定例総会の懇親会は終了しました。