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活動レポート

3月度例会 令和6年3月18日(月)

【講演会】

講師:ケネディクス株式会社 顧問  川島 敦様

株式会社日本エスコン 社外取締役

・株式会社クリーンプラネット 社外取締役

・株式会社SMBC信託銀行 顧問

・Project O株式会社 顧問

・Creed Holdings Pte. Ltd. 顧問

 

略歴:

1998年:ケネディ・ウィルソン・ジャパン(現:ケネディクス株式会社)入社。

不動産投資アドバイザリー部長として、1999年2月に本邦では殆ど事例がない時期に100億円の収益ビルを信託受益権化し、ノンリコース・ローンを導入して取得し、日本の不動産ファンドビジネスの黎明期をつくる。

2007年:同社代表取締役社長に就任

2013年:同社代表取締役会長に就任

2019年:同社顧問に就任、現在に至る。

 

 

演題:「不動産ファンドビジネスの勃興、天国、地獄そして未来」

 

「講演概要」

1.勃興~天国

・東京23区の商業地における地価公示価格は、1985年頃には200万円/㎡程度であったが、1985年9月プラザ合意以降急騰し、1988年には800万円/㎡を超えた。1992年頃までその価格で推移したが、その後価格は急激に低下し1997年頃には200万円/㎡程度となった。この地価高騰により100兆円程度の不良債権が発生したと言われている。

・当時は240円程度(1985年)であった為替(ドル円)が、プラザ合意以降120円程度(1988年)まで円高となった。円高不況を招来し、公定歩合が5%(1985年)から2.5%(1987年)に下げられた。その結果地価が高騰することとなり、公定歩合は再度6%(1990年)まで上げられた。株価は、当時の最高値38,915円(1989年12月29日)となった。

・この時代、無念にも多くの企業が負債を抱えて破綻し(1991年~2008年)、銀行業界も凡そ5つに統合され(2003年)、損保業界も3つに集約され、また多くの生命保険会社が破綻することになった(1997年~2008年)。

・不動産ファンドビジネスは1998年~2001年を勃興期、2001年から2008年を天国、2008年~2010年を地獄、その後は復活と言える。

・ケネディクス株式会社(KDX)では、1999年2月初めて他の米不動産ファンドと共同で川崎の大型オフィスビル(川崎テックセンター)を証券化して全額を購入した。建物の半分をコンピュータルームが占めるデータセンタービルであった。

・このビルのアセットマネジメントにより、投資額102百万円に対して回収額809百万円(2001年8月売却)とNet利益707百万円となった。稼働率は80.3%⇒98.8%に向上、年間管理コスト263百万円⇒209百万円に圧縮、営業利益724百万円⇒1184百万円に拡大した。

・我が国の不動産ファンドマーケティングの受託資産残高(AUM)は、私募ファンドとJ-REIT合計で、2004年頃からスタートし2023年6月には55兆円に達している。ケネディクスのAUMは、2010年に1兆円を突破し2023年には3兆3357億円となった。

 

2.地獄

・ケネディクス(KDX)の株価は、2003年12月には5万円程度であったが、その後急騰し、2006年初めには頂点の39万5000円となった。その後低下し2009年3月には最安値5140円となった。2008年9月にリーマンショックがあり、日経平均も7162円90銭(2008年10月27日)まで下がった。

・当時は2008年~2011年にかけて多くの不動産関連企業が、大きな負債を抱えて破綻した。これら企業の負債総額は、3兆564億円であった。独立系上場不動産アセットマネージャーでは、2001年に上場したdaVinci、PACIFIC等多くの企業は2010年には破綻もしくは上場廃止になったが、ケネディクスはAUMが6223億円(2007年)から11,177億円(2012年)と増加できた。

・これは2009年1月から2010年12月にかけて、資本市場からの大規模なエクイティ・ファイナンスや物件売却等により手元資金約663億円を創出し、無担保ローン返済やメザニン保証案件等の資金需要に対応した結果である。

・これらから言える教訓としては、①世界のどこかの出来事でも対岸の火事と思うな、②役員会でNoと言えること、③末端の社員までの距離感を縮めること、④一人でも多くの味方をもつ、⑤見識に頑固であれ、⑥地方都市では買わない。

 

3.復活~未来

・不動産ST(セキュリティ・トークン: 特定の不動産に投資するファンドの持分をデジタル化した新しい金融商品)の拡大を期待している。不動産STの市場規模推移をみると、2021年8月に日本で初めて不動産STOが行われて以来、2024年2月15日時点において、不動産の鑑定評価額ベースで累計約2,390億円、不動産STの発行額ベースで累計約1,060億円の市場規模に成長した。

・不動産STは、J-REITや私募REITとは異なる商品性を有し、既存の証券会社顧客基盤を活用しながら、今後も着実に市場規模を拡大していくと考えており、2030年には2.5兆円(不動産ベース)に達すると思料する。

・不動産STには、無数のプレイヤーが、多様な枠割で参入しつつある。

 

以上

 

ローズホテル横浜 2F ザ・グランドローズボールルームA(横浜市中区山下町77番地)にて、役員会・講演会・懇親会を開催しました。講演会後の懇親会では大須賀毅会長よりご挨拶、山田智也副会長の乾杯の音頭でスタートし、その後、多くの会員の方々からのご挨拶やトークが続きました。最後は斉藤昌喜副会長の音頭による締めで本例会は終了しました。