活動レポート

定例総会 令和4年4月25日(月)

定例総会

本年度定例総会が17時よりハイアットリージェンシー横浜 20階Grand Ball Roomにて開催され、本年度会長には昨年度に引続いて齋藤一郎氏(株式会社天幸物流 副社長)、副会長には大須賀毅氏(株式会社丸眞 横浜支店長)と斉藤昌喜氏(株式会社北原不動産 取締役部長)が選任されました。また今年度の事業を推進する各役員も決定しました。

また前年度事業報告・収支決算・監査報告、令和4年度事業計画・予算案の各説明があり、承認されました。

 

 

 

 

 

令和4年度定例総会記念講演会

日本銀行 横浜支店 支店長 河西 慎 様

「最近の金融経済情勢について」

 

 

 

 

[講演概要]

1.日本銀行横浜支店の紹介

・元々は、終戦直後の1945年8月に、横浜正金銀行本店(現在の神奈川県歴史資料博物館)に間借りする形で、駐在員事務所を置いたのが始まり。GHQに対して円建て軍票ではなく日本銀行券を使用するよう促すことが、初期の重要な役割であったと聞いている。支店となったのは1974年で、全国32か店の中で最も遅くに誕生した支店。

・主な業務は、①現金の受払い、②国庫金(税金、交通反則金等)の受払い、金融機関同士の資金決済、③金融経済動向の調査等である。横浜支店は、地元経済の規模が大きいため、現金の受払いが非常に多い。昨年は、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の経済効果に関する試算も行った。コロナ禍で苦しんできた県内観光業の回復の後押しになることを期待したもの。

 

2.最近の経済動向

・全国的には、景気見通しが下振れているが、神奈川県は少し明るめ。3月短観における業況判断は、全国が悪化する中、神奈川は3から6に改善した。全国32か店の中で改善したのは3か店のみ。製造業は、供給制約に伴う自動車等の生産の下振れの影響で4から1に悪化したが、非製造業はまん延防止等重点措置が適用される下でも10から15に改善した。県内に巨大な人口を抱え、東京とも隣接することが、特に行動制約がかかる下では非常に大きな強みとなることが、数字に表れた。

・世界経済は、22年・23年と過去平均並みの3.6%の成長率を維持する見通しがIMFから示されているが、不確実性は非常に高く下振れリスクが大きい。そうした中、国内生産は、長引く供給制約の影響で、見通しに比べて下振れる状況が続いている。神奈川県は、生産に関しては全国以上に弱い動きである。これから上海ロックダウンの影響が数字に表れてくることを考えると、当面、生産の回復に関しては厳しい見方が必要。

・一方、個人消費に関しては、これまで振るわなかったサービス消費に持ち直しの兆しが見られている。県内宿泊施設では、卒業旅行や就学旅行で海外や沖縄などに行けない若年層を中心に、客足が好調な模様。ただし、飲食店の戻りは鈍い。今後のサービス消費の更なる回復を左右する1つの要素は、感染症への警戒心が特に強い年配者の動向。

・このように、供給制約や感染症の影響を受けながらも、3月短観の21年度企業利益は、全産業で前年比+18.7%とはっきりと増加。22年度も+8.6%の増益見通し。この企業収益の改善が設備投資へと繋がる、企業部門の好循環が働いている。21年度設備投資は全産業で前年比+22.9%と増加し、過去を振り返ってみてもかなり高い水準まで回復する見込み。22年度も高水準横ばいの計画となっている。

・一方、これまでのところ、企業収益の改善が、なかなか雇用・所得面の改善へと繋がっていない。有効求人倍率は、底打ちしたものの持ち直しの動きは緩慢であり、コロナ前に比べてかなり低い水準に止まっている。22年度の春闘における賃上げ率は、定昇込みで2%ちょっと、ベアだけでは0.5%程度となる見込み。企業の人手不足感は高まっているので、今後の改善に期待。

・企業間の物価は、米欧ほどではないが、日本でも約40年振りの上昇率に達している。しかし、消費者物価は米・欧が6~7%であるのに対して日本はまだ0%台半ば。昨年4月の携帯電話料金引き下げの一時的要因が剥落しても、2%程度に止まる見込みであり、米欧とは大きく状況が異なる。

・日本では、物価も賃金も上がらない状態が定着し切っている。OECD加盟国の平均賃金は、1991年から30年間で3割近く上昇しているが、日本ではほぼ横ばいであったため、いまや日本の賃金水準は加盟国平均以下。この間、為替は円安傾向にあるため、企業も個人も海外に出ようと思うと懐の寂しさを実感するし、良い人材を日本に惹き付けられないという問題もある。やはり、賃金と物価が持続的なペースで上昇していく好循環を実現していくことが大事。

・このように、物価も賃金も米欧に比べて上昇圧力が弱いため、主要国の中で日本銀行は最も緩和的な金融政策スタンスにある。結果として、為替は円安方向に動きやすい。インバウンドが増えないこともあり、円安の恩恵がグローバル企業に偏りやすく、圧倒的に多くの主体にとってはマイナス。日本銀行自身、適切な金融政策運営に努めなければならないが、同時に、従業員の賃上げや、下請け企業との取引価格の見直しなどによって、円安のメリットが幅広く行き渡るようにすることも大事。

・不動産向け貸出は、実体経済の伸び以上に増加している。現時点で過熱感が強いとは考えていないが、今後の県内不動産の動向には、注目している。

 

3.中長期的な視点

・日本は欧米に比べて新型コロナ感染者数が少なく、経済の落ち込みも小さかったが、そこからの回復スピードは緩慢である。財政支援はGDP比で見て欧米並みに行ったため、財政のプライマリーバランスは大きく悪化。経済が大きなショックに見舞われた際に、財政を大胆に出動させることは必要不可欠だが、いつまでも続けられる訳ではない。身を縮めていても、少子高齢化に伴う低成長という構造的な課題は解決しない。むしろ、この機に成長力を高めるための取り組みが必要。今後、労働力人口の減少を打ち返して成長力を強化するためには、これまで以上に踏み込んだ施策を考えていかなければならない。

・日本の企業部門は長らく貯蓄超過にある。今後この資金が活用されていくには、大胆な規制緩和と、的を絞りつつ持続性を持たせた財政サポート、企業収益の賃金を通じた分配等が重要であろう。

・「悲観は気分、楽観は意思」という言葉がある。ともすると悲観的になりやすいご時世であるが、我々一人一人が、強い意思をもって楽観的であろうとすることが大切である。

 

以上

 

 

懇親会

定例総会、日本銀行横浜支店長河西慎様の記念講演会終了後、懇親会が開催されました。会場のハイアットリージェンシー横浜 20階 Grand Ball Roomは横浜港やベイブリッジが一望できる見晴らしのよい明るい会場でした。

 

まず神奈川県不動産のれん会の齋藤一郎会長よりご挨拶がありました。その挨拶の中で、当会会員株式会社西田コーポレーションの西田光孝社長が、昨年10月国土交通省の住生活年間功労者として国土交通大臣表彰を受けられたことが報告され、お祝いをしました。またかながわ信用金庫の平松廣司理事長の著書「論語と算盤と信用金庫経営-渋沢栄一の思想」が発刊されたことが紹介され、参加した会員に各社1冊配布されました。

 

そして大須賀毅副会長の乾杯の音頭で、懇親会がスタートしました。

 

日本銀行横浜支店長河西慎様他多くの参加者からご挨拶をいただき、斉藤昌喜副会長の音頭による締めで4月定例総会の懇親会は終了しました。